ちくちく（斉藤さんと杉田さん）

帰りの電車で書き始めたミニストーリーだったが書き終わらず、今足したら尻切れトンボちっくになってもた。
物足りないのは仕様です。

さぁ風呂風呂…

もし興味ある方は『つづき』からどうぞ。

（7/16追記）
『携帯から』のカテゴリーだったんですが『小話』に変更したんですよ…。

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　じっとりした空気は、いつしか日差しと共に夏を知らせていた。
　河原を流れる風は暑さの中にドキドキを含んでいる。
　がっちりした体型の二人組が肩を並べて土手を歩いていると浴衣姿の女性とすれ違った。
「夏…だなぁ」
　斉藤が女性を視線で追いながら呟くと、並んでいたはずの歩調がなくなった。
「杉田さん？」
　歩みを止めた杉田の表情が読めない。
　ただ、いつも向けて来る優しい視線が感じられない。
　斉藤は不思議に思いながら杉田のそばに寄ると、杉田がほんの少しだけ顔を背けた。
「どうしたんですか？」
「………すか」
　やっと語尾が聞こえる程度の小さな声。
　聞き逃してもおかしくない声に、斉藤が聞き直した。
「杉田さん？」
　その優しい言い方は杉田の心に刺さってしまう。
　杉田が斉藤にちらっと視線を渡すと同時に、すぐに目が合ってしまった。
　その瞬間、杉田は逃げ場を失ってしまう。
　それは杉田の顔を染めるのには充分だった。
「だからっ、……ぃとうさんは、あぁいう女性が好みなんですか！」
　そんなつもりはないのに、つい口調が怒ってしまった。
　しかし斉藤はほんの少しだけ視線を逸らしたかと思ったがすぐに真摯な眼差しを杉田に向けた。
「？　杉田さんは嫌ですか？」
　その一言は、杉田の心から大事な何かが流れ出していく、そんな気がした。
「い…いえ…」
　やっと口をついて出た言葉は、これ以上、傷を深くしないための虚勢。
　しかし斉藤は嬉しそうに目尻を下げた。
「はー、良かった」
　斉藤の笑顔に裏腹な乾いた笑顔を杉田が作ったのと同時。
「きっと杉田さんは浴衣が似合うと思うから…」
「…え？」
「再来週の花火大会に浴衣を着てもらえないかと」
「…え、と」
「あ、いえ！　女性用の浴衣を着てくださいとか言う意味ではなくですね！」
　焦る斉藤に驚きを隠せない杉田は、呆然と斉藤を見つめると頭の中を素早く整理した。
「あの…斉藤さん」
「はっ、はい！」
「もしかして、俺…誘ってもらってるんですよね？」
　確かめるように聞き返すと、斉藤の顔が見る見る染まると慌てて両手を振った。
「あ、嫌…ですよね！　男に誘われても！　すいませ…」
「行きます！」


　数日後、浴衣を新調する杉田と付き合わさせられている森山の姿が見掛けられたのは言うまでもなかった。


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