一本木と田中

昨日の文章を脳内サルベージ。
リハビリリハビリ。だから推敲してないよー（ダメじゃん）
萌え話のつもりだったけど、小話カテゴリーにした。つか久しぶりの更新過ぎて泣ける。

もし興味ある方は『つづき』からどうぞ。

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  代表して二人がコンビニへ行くことになった。

「お、肉まん」
　店内へ入ると、レジ横に新たに設置されたヒーターを見て一本木が呟いた。
　しかし、その後に続いた田中は一本木の言葉に耳も貸さず、カゴを手にして店奥にある冷蔵庫へと歩みを進めていた。
「待てよー、田中ぁ」
　追いかけてきた一本木を無視して冷蔵庫の扉を開けると、田中は下の方に冷やされている2リットルのペットボトルをカゴに入れ一本木を見た。
「…僕達は買い出しに来たんですよ？」
「知ってんよ？」
　何言ってんだ、と言わんばかりの表情の一本木を見ると田中は盛大に溜め息を吐く。
　だが、そんな溜め息など何のその。
　一本木はさっさと田中の側を離れていた。
「わかってないじゃないか」
　田中はぼそりと呟くと、隣りの扉を開け、先程とは違う種類の2リットルのペットボトルを取り出しカゴに入れる。
「あとは…っと」
　踵を返し、商品棚の方へ体を向けると手にしているカゴに違和感を感じた。
「？」
　たまたま落ちた視線の先には、田中自身が入れたペットボトル以外に、小さな紙パックとそれを置いて引っ込めようとしている手。
　その手の犯人は、動きを封じられたかのように微動だに出来ずにいる。
「せ・ん・ぱ・い？」
「い……良いじゃんよぅ」
「駄目です」
「ちぇっ」
　一本木は子供のように口を尖らせると、渋々手を引っ込める。
　その手には入れた紙パックが持たれていないので、田中はそれを一本木に渡すと何も言わず買い物を進めた。
　カゴ入れに失敗した一本木は、大人しく商品を元に戻すと反対方向から田中の側へ行き、ただ田中の買い物を見ていただけだった。
　そして全ての買い物が終了した田中がカゴを持ってレジに行く。
　店員の手によってバーコードを読み取られていく商品は、カゴから一つずつ出され値段を読み上げられる。
　その流れに乗るように、一本木が店員に話しかけた。
「すんません、あと肉まん」
「肉まんですね？」
　一本木の注文を聞き返した店員に、田中がすかさず切り替えした。
「あ、肉まんはいらないです」
「え？」
　店員の声に一本木がすぐさま舌打ちをしたが、田中はそれを聞かぬ振りして再度いらないと告げると店員は戸惑いながらも一本木に視線を送る。
　一本木は小さな声で謝りと断りの言葉を店員に向けたことで、その店員は安心したように金額を告げた。
　田中は会計を済ませると置かれた袋を手にしてさっさと店外へ出たが、後ろに気配を感じずに思わず立ち止まってしまった。
「おい、何止まってんだよ」
　すぐ聞こえた声に、ちらりと後ろを見れば一本木の姿が目の端に入る。
　だが、その手に何かを持っているとは思っていなかった。

　帰り道、田中は一言だけ言いたくて後ろを歩いてくる一本木の方に向き直った。
「…先ぱ、いぃ！？」
　田中が見たのは、先程買わなかった筈の肉まんを手に持ち頬張っている一本木の姿。
　一本木は田中を見ると、もう片手に持っていた半欠けの肉まんを差し出した。
「んぉ、食うか？」
「いりませんよ！　っていうか、何食ってんすか！」
「肉まん」
　しれっと言うと、片手の食べ掛けを口に放る。
　その姿に思わず呆気に取られた田中の前に一本木が立つと、その開いた口にもう片方の肉まんを押し付けた。
「んぉ」
「食え。お前、昼メシ食ってないだろ」
「！」
　何故そんなことを知っているのか。
　田中が驚きを隠せずにいると一本木は溜め息を吐き、田中が手にしていたコンビニ袋を取り上げた。
「ほれ、自分で持てよ」
「…ふぁい」
　開いた片手で肉まんを持つと、一本木はスタスタと先を歩く。
　田中は慌てて全部を口に詰め込むと一本木を追い掛けた。
　少しの間だけ二人は黙り、田中は口の中のものが無くなると一本木に話し掛けた。
「あの…何でメシ食ってないとか知ってんですか」
「勘」
「はぁ」
「ちゃんと食わないとチカラが出ないだろうが。チカラが出なきゃ応援もできねぇ」
「…はい」
　尤もな一本木の意見に、田中が項垂れると一本木はその頭を軽く叩いた。
　そしてまた先を歩く一本木の後ろ姿を見た田中は少しだけ大きな声を出した。
「有難うございます、ごちそうさまでした」
「ほれ、早く団室戻るぞ」
「はいっ！」
　振り向かない一本木を追い掛けるように田中が少しだけ小走りをし、二人は並んで団室へと戻った。


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コンビニに肉まんのヒーターがあったので。
もうそんな季節なんですねー。