森山と杉田

思いつくがままに、たまには高潔っ子を書いてみる。
杉田と森山の話です。どっちかっていうと森杉より杉森に見えるかも。苦手な方はご注意を。



興味ある方は「つづき」からどうぞ。

---

ガキの頃からの幼馴染であるこの暴君は、時折無茶苦茶なことを言う。
それを知っていても、今回はさすがに参った。



－　恋する暴君　－



応援練習後、いつも最後にこの団室に残るのは自分達だけだ。
参謀役として団内を取り仕切っている杉田謙信と俺、森山剛。
実際、俺はいつも最後まで残るがやることがある訳ではない。
幼馴染である彼を待っているだけなのだ。
「よし、これで明日の応援の割り振りはオッケーっと」
杉田はノートを閉じると大きく伸びをする。
自分はその正面で、いつものように本を読んでいた。
「終わったか？」
「あぁ」
杉田の返事に、読んでいた本にしおりを挟んで閉じる。
そして自分も同じように伸びをすると椅子から立ち上がった。
「じゃあ帰るか」
「待て、剛」
本以外は特に荷物がないので、早々に団室のドアに向かった自分を呼び止めた杉田を振り返る。
しかし杉田はそこから動こうとしていなかった。
「何だよ謙信。終わったんだろう？」
当然の疑問をぶつけるが、すぐ返答が帰ってこない。
それどころか杉田は俯いて目線すらこちらへ向けてこないではないか。
幾らなんでもここまであからさまにおかしな行動をされると、思いっきり眉間に皺も刻まれる。
とりあえずは彼の傍に寄って、彼の肩へ手を掛けようと名を呼んだ時だった。
「どうしたんだ、謙し…っ！」
上げようとした手は手首を掴まれ、かなりの力で引っ張られる。
瞬間、バランスを崩しかけたが転ぶことはなかった。
ただ引き摺られるように引っ張っていかれると、いきなり団室内にある二人掛けの大きなソファへと投げつけられた。
「痛っ、何すんだよ！」
勢いで外れそうになった眼鏡を押さえて振り返れば、すぐ側で立ちはだかる杉田の姿。
あまりに近かったから驚いて一瞬躊躇した時を彼は見逃さなかったようだ。
そのまま自分の上に被さって来ると、馬乗りになり自分のことを見下ろしている。
そして自分の学ランのファスナーに手を掛けると、ゆっくりとそれを下ろしていった。
「何してんだよ、謙信」
「何って、脱がしてんだけど？」
「意味が判らんぞ、どけ」
「いやだ。…と言ったら？」
悪戯な笑みを浮かべながら胸元まで下ろすと、そっと胸元に手を忍ばしてくる。
ちょっとくすぐったいが、反応したらきっと最後まで何かをやる気になる。
杉田はそう言うやつだ。
長く付き合っているからこそ、どこまでが冗談でどこまでが本気かくらいの判断はつけられる。
少しの辛抱だ、そう自分に言い聞かせて杉田の好きにさせる。
滑り込ませた杉田の手が器用に蠢くが、気はそっちへ持って行かないように。
すると判らないうちに身体が強張るわけで。
それをすぐに察知した杉田は、そのまま耳元へ唇を寄せてくる。
しまった、と思ったのも束の間、それは思いも掛けない形で動きが止まった。
「なんだ、反応なしかよ。つまんないな」
「…どういうつもりだ？」
あしらうように笑いながら言う杉田に、きつめの声で問う。
その声の変化に気付いた杉田は驚いたような表情をすると、自分の上から退いた。
「止めた、気分削がれた」
「謙信」
自分の諌めるような声色に、背を向けた杉田がびくりと肩を揺らす。
ほんの少しの間、嫌な沈黙が流れるが、それを破るのはいつも杉田からだ。
今日も例外なく、杉田が伐悪そうに自分の方を振り返るとぼそりと謝った。
「すまん、剛」
「…何があった？」
大きく溜息を吐くと、ソファから上半身を起こした。
杉田は自分の方に視線を投げると、自分の頭を叩いた。
「イテッ」
「お前のせいだ」
「は？」
眉根を寄せた杉田とは反対に、思わず呆気に取られてしまう。
何？今、何言ったこいつ。
「いや、意味わかんねぇよ」
その言葉に杉田が再び伐悪そうな表情を浮かべると、小さな声で話し始めた。
「だってよ…お前、今日ずっと団長と…」
「…あ、」
そう言われれば思い当たる。
今日はずっと自分は団長のサポートで横に立っていた。
いつもならその反対側に同じように並んで立つ杉田は、今日は菊地と西園寺の世話を焼きっぱなしだったのだ。
「…何、お前。もしかしてヤキモ、いってえっ！！」
言い終わる前に渇いた音が響くくらい思いっきり頭を叩かれた。
頭を押さえながら杉田を見れば、茹でダコのように真っ赤に顔を染めている。
「そっか。お前、団長のこと…」
「ウ、ウルサイ！」
そう言う目で見てることを忘れてた。
叶わなくていい、ただ見守っていたいんだとか言ってたな。
「そりゃ悪かったな」
「いいけどよ…」
小さく舌打ちすると、杉田は恥ずかしさから顔を背けたままで。
それを見て、思わず口を吐いて出てしまった。
「可愛いな」
「は？！誰が！？」
「お前だよ。さ、帰ろうぜ」
可愛いという単語に慌てふためいている杉田を余所に、下げられたファスナーを上げ直す。
そして杉田の横を通り過ぎると、さっさと団室のドアに手を掛け振り向いた。
「ホラ、置いて行くぞ謙信」
「ま、待て！」
杉田は、慌てて机に置いておいたノートを手にすると自分の後を追ってきた。


**************
そんな訳で森杉（杉森？）『×』て感じじゃなくて『＋』な感じでお願いします。
個人的にはホラさ、森＋鬼←杉なんでね（あくまで杉田は片思い）
杉田は絶対、森山に対しては暴君だと思う。逆に団長には従順。
この時点ではまだ、モリーと団長は何も無いです。いや、これからもないよ多分。

それよりもタイトル、こういうタイトルのＢＬ本があった記憶があるのが気掛かりだ…。
（記憶じゃなくて、あった確信がある）